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【4ヶ月の試験を一発で通す】はんだクラックの発生メカニズムと、設計段階でできる根本対策

【4ヶ月の試験を一発で通す】はんだクラックの発生メカニズムと、設計段階でできる根本対策についてまとめたアイキャッチ画像

「1000サイクル終わりました。……あれ、チップ抵抗が消えてる?」

恐る恐る恒温槽の床を見ると、ポツンと落ちている小さなチップ部品。評価担当からこの報告を受けた瞬間、サッと血の気が引く思いをしたことはありませんか?

1サイクル1時間※の熱衝撃試験。1000サイクルなら約1ヶ月半、3000サイクルともなれば4ヶ月以上かかります。もし試験の終盤で「はんだクラック(亀裂)」や「部品の脱落」が発覚すれば、設計を修正してもう一度ゼロからやり直しです。納期を考えると、絶対に一発で通さなければならないプレッシャーがありますよね。

今から10年ほど前、僕も試験後に基板から部品が消え去るという惨劇を経験しました。当時、依頼者に「これ、どうやって対策するの?」と聞かれても、「はんだの粘り気を変えるんですかね?長手方向が弱いとは聞いたことあるんですけど……分かんないっす」と曖昧にしか答えられませんでした。

祈るような気持ちで恒温槽の扉を開ける「神頼みの評価」から抜け出すためには、そもそも「なぜ割れるのか?」というメカニズムを理解し、設計段階で弱点を潰しておくしかありません。

本記事では、過去の僕のように暗闇で悩むエンジニアに向けて、はんだクラックの正体と、試験を一発でクリアするための設計的アプローチを解説します。

この記事でわかること


✅ はんだクラックの真犯人「熱膨張係数の差」とは何か
✅ クラックが発生しやすい「基板の弱点部位」トップ2
✅ 「盛りはんだ」が最悪の逆効果になる理由(ボディクラックの恐怖)
✅ 試験前に勝負を決める基板設計の根本対策(スリット等)

コラム:そもそも「1サイクル1時間」って短くない?


「1サイクル1時間」はあくまで熱容量が小さい基板単品などの一例です。熱衝撃試験で一番やってはいけない失敗は、「製品の内部(はんだ接合部)が目標温度に達していないのに、次のステップに進んでしまうこと」です。

金属の分厚い筐体に入っていたり、樹脂で密閉されていたりする製品は、恒温槽の空気が125℃になっても、中の基板が125℃に安定(サチレート)するまでに30分以上かかることもザラにあります。温度が上がりきらないまま試験を終えてしまうと、市場に出たあとに本当のクラック地獄を見ることになります。

1. なぜ「はんだ」だけが割れるのか?(真犯人は「伸び縮み」の差)

試験後に部品がポロリと落ちてしまうのは、決して「はんだ付けが下手だったから」ではありません。真犯人は「熱膨張係数(温度による伸び縮みのしやすさ)」の違いです。

ポイント


チップ抵抗の本体は「セラミック(陶器のようなもの)」、基板は「ガラスエポキシ(一般的な緑色の基板)」でできています。

熱衝撃試験で高温と低温が繰り返されると、基板は大きく伸び縮みしますが、セラミックの部品はほとんどサイズが変わりません。

この「大きく動く基板」と「動かない部品」の間で、ズレによるストレスを一身に引き受けて引き裂かれるのが、クッション役である「はんだ」なのです。

温度の上下が繰り返されることで金属疲労が蓄積し、やがてクラックとなって完全に破断します。

コラム:昔は「はんだクラック」なんて少なかった?


昔の「有鉛はんだ」は鉛が含まれていることで適度に柔らかく、熱ストレスをうまく吸収してくれていました。しかし、環境保護のため鉛が使用禁止になり、現在の「鉛フリーはんだ」が主流になりました。鉛フリーは硬くて脆いため、現代のエンジニアは昔以上に「クラック対策」に頭を悩ませることになったのです。

注意:基板の「材質」が変わると難易度は激変する


メタルコア基板(アルミ基板・銅基板など):
LEDやパワーデバイスなど、熱を逃がすために使われます。しかし、アルミや銅はFR-4よりもさらに大きく熱膨張します。つまり、上に乗っている部品との「伸び縮みの差」がさらに広がるため、はんだクラックの危険度は跳ね上がります。

フレキシブル基板(FPC:ポリイミド等のフィルム状基板):
ペラペラで曲がるため基板自体が歪みを吸収してくれるように思えますが、部品の実装部(はんだ付けされた硬い部分)と、曲がる部分の境界線に極端なストレスが集中しやすくなります。

2. クラックが発生しやすい「基板の弱点部位」トップ2

では、具体的にどんな場所・部品が危険なのでしょうか?設計図を見る際に警戒すべきポイントは以下の2つです。

① 大型のチップ部品(3216サイズ以上は超危険)

現場でよく「1005」「3216」と呼ばれているのは、部品の寸法(ミリ)を表しています。「1005サイズ(1.0mm × 0.5mm)」のようなゴマ粒サイズなら、両端の距離が短いため、基板が伸び縮みしてもズレは小さく済みます。

注意


「3216サイズ(3.2mm × 1.6mm)」という米粒サイズ以上の大型部品になると、両端の距離が離れるためズレ幅が大きくなり、一気にクラック発生率が跳ね上がります。

② 基板が「たわむ方向」と平行(長手方向)に配置された部品

「長手はクラックになりやすい」という現場の噂、実は本当です。

基板は温度変化や、ネジ止めの応力によって「たわみ(反り)」が発生します。基板が最も曲がる方向に対して、部品を「平行(長手)」に配置してしまうと、はんだ接合部がモロに引き剥がされる力を受けます。

ポイント


たわみやすい方向に対しては「垂直」に配置するのが設計の鉄則です。

3. 罠に注意!「はんだを山盛りにすれば割れない」の勘違い

対策を考える時、新人の頃に思いつきがちなのが「じゃあ、はんだの量を増やして、山盛りにすれば強度が増して割れないのでは?」というアイデアです。

注意


これは逆効果であり、絶対にやってはいけない最悪の対策です。

鉛フリーはんだは、熱衝撃を受けると内部の金属組織が時間とともに変化(結晶化)し、そこからクラックが進行するという性質を持っています。量を増やしたところで、この根本的な劣化メカニズムは止められません。

さらに恐ろしいのが、「はんだは割れていないのに動かない」という恐怖のボディクラックを引き起こすことです。

レントン
レントン

熱衝撃試験後、製品が動かなくなりました。でも、顕微鏡ではんだを見てもクラックは見当たりません。「なんで?」と素子を1つずつ剥がして確認していくと……なんと、セラミックコンデンサ(セラコン)の本体が真っ二つに割れてショートしていたのです。

設計の先輩に言われた言葉を今でも覚えています。「セラコンはね、名前の通り『陶器』なんだよ。お皿と同じで、硬いけど曲げにはモロいんだ。」

ポイント


はんだが「富士山のような裾野(フィレット)」を形成している時は、はんだ自身がクッションとなって応力を逃がします。しかし、ぽっこりと丸い山盛りにすると、はんだが応力を逃がせる形状(裾野)を失い、基板の歪みストレスが部品本体にダイレクトに伝わります。

結果として、はんだが割れる代わりにお皿がパリンと割れるように内部でヒビが入り、ショートや発火などの致命的な破壊を引き起こしてしまうのです。

4. 試験前に勝負を決める!基板設計でできる根本対策

では、根本的にクラックを防ぐにはどうすればいいのでしょうか。答えは「基板のパターン設計」の段階にあります。

① パッド(はんだを塗る銅箔)サイズの最適化

パッドが大きすぎると先ほどの「はんだ過多」になりやすく、逆に小さすぎると強度が不足します。部品メーカーが推奨する適正サイズをミリ単位で守り、応力を分散できる「綺麗な富士山型の裾野」を作ることが最大の防御です。

② スリット(切り込み)を入れて応力を逃がす

もし、どうしても基板が大きくたわむ場所(コネクタの近くやネジ止めの横など)に部品を置かなければならない場合、部品のすぐ横の基板に「スリット(細長い穴)」を開けるという裏技があります。

ポイント


基板が反ろうとしても、スリットがあることで力が分断され、部品までストレスが届かなくなります。これは物理的に応力を断ち切る非常に強力な対策です。

まとめ:熱衝撃は「祈る」のではなく「予測」して倒す

まとめ


✅ はんだクラックの真犯人は「熱膨張係数の差」。はんだ付けの失敗ではない
✅ 3216サイズ以上の大型チップ部品は要注意
✅ 部品はたわみ方向に対して「垂直」に配置するのが鉄則
✅ 「盛りはんだ」は逆効果。ボディクラックによるショートを引き起こす
✅ パッドサイズの最適化とスリットが設計段階でできる最強の根本対策
✅ サチレート時間を考慮しないと市場でクラック地獄を見る
レントン
レントン

熱衝撃試験で数ヶ月待ったあとの「NG」判定。あの時の絶望感と、設計部門に報告しに行く時の足の重さは、何年経験しても慣れるものではありません。

こうしてメカニズムを紐解いていくと、評価部門から設計に対して「ここはスリットを入れましょう」「部品の向きを90度変えましょう」と、自信を持って提案できるようになります。「神頼みの評価」を卒業して、「なぜ割れたのか」「どうすれば防げるのか」を理論で語れるエンジニアになれれば、ただの試験作業が「設計を導く仕事」に変わり、一気に面白くなりますよ!


次回は「4ヶ月も結果を待っていられない!途中で寿命を予測できないの?」という現場の切実な悩みに答える、「コフィン・マンソン則」に切り込みます。

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