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【真実を塞いでいないか?】はんだクラック断面観察で絶対にやってはいけない「研磨の罠」と職人技

真実のはんだクラックをふさいでいないかのアイキャッチ画像

「熱衝撃試験が終わった!よし、基板を切って顕微鏡で見てみよう。……うん、クラックなし!合格!」

もしあなたが、基板を適当に樹脂で固め、ノコギリで切って、見よう見まねでヤスリがけをして断面を見ているとしたら……その「合格」、実は大ウソかもしれません。

恥ずかしながら、10年前の僕は完全にこの罠にハマっていました。実ははんだ(特に鉛フリー)は非常に柔らかく、やり方を間違えると「本当は割れているクラックを、削りカスで押し潰して見えなくしてしまう」という恐ろしい現象が起きます。

最終回となる今回は、僕が過去にやらかした「エポキシ爆発事件」などの失敗談も交えつつ、真実を見逃さないためのターゲット選定と、断面作成の職人技を解説します。

この記事でわかること


✅ 膨大な素子の中から「ここを切れば確実」なターゲットを絞り込む方法
✅ 切断前に「鎧を着せる」プロの前処理テクニック
✅ 「真空引きと大気圧戻し」をセットで行う極意
✅ はんだの「ダレ(スミアリング)」がクラックを隠す恐怖と、防ぐ研磨の黄金テンプレート
【4ヶ月の試験を半分に!?】はんだクラック寿命を予測する「コフィン・マンソン則」の超・実践的な使い方

「熱衝撃試験で4ヶ月?……なんとかならないの?製品リリースに間に合わないよ」 プロジェクトも大詰めを迎えた頃、設計やプロジェクトマネージャーからこんな無茶振りをされて、頭を抱えたことはありませんか? ...

1. どこを切る?「真実の1枚」を絞り込むターゲット選定術

樹脂で固めて磨く作業は、膨大な時間と労力がかかります。すべての素子を確認するのは現実的ではありません。評価プランの段階で、「ここが割れていなければ他も大丈夫」と言い切れる最悪条件(ワーストケース)を狙い撃ちする必要があります。

シミュレーションツールがなくても、以下の3つのポイントを見ればアタリをつけられます。

ポイント


① 基板の「端」や「角」を狙う:
基板の端は中央よりも温度変化による伸び縮みの幅(変位)が大きく、はんだへの攻撃性が高くなります。

② 「固定点」の周辺を狙う:
ネジ止め箇所のすぐ横など、基板の動きが拘束される場所にある素子は、ストレスが集中しやすいため絶好のターゲットです。

③ X線で「アタリ」をつける:
X線は全数確認には向きませんが、断面カットする前に怪しい箇所を絞り込む「予備診断」として非常に有効です。はんだの形が不自然なものを見つけたら、そこを迷わずカットしましょう。

2. 切断前の「鎧」と「熱を出さない」切断の鉄則

樹脂で固める前に、一つ重要なテクニックがあります。それは「部品に鎧(よろい)を着せる」ことです。

注意


基板のままノコギリやルーターで切断すると、その振動や基板のたわみで、本来なかったクラックを自分で作ってしまうリスクがあります。これを防ぐため、プロは切断する前に、ターゲット部品の周囲をあらかじめ樹脂でポタポタと固めて保護します。

樹脂が完全に硬化したら、観察したい断面に向けてダイヤモンドカッターや低速カットソーで切断します。

ポイント


この時も、「熱を出さないこと」が鉄則です。早く切りたいからと高速でゴリゴリ切ると、摩擦熱ではんだの金属組織が変わってしまいます。必ず水冷(クーラント)しながら、ゆっくり時間をかけて切り出しましょう。

3. 真空引きの極意:実は「大気圧に戻す瞬間」が本番

切断したサンプルを型に入れ、さらにエポキシ樹脂で全体を固めます。ここで必須なのが「真空引き」ですが、多くの人が目的を勘違いしています。

注意:単に「空気を抜く」だけで終わっていませんか?


真空ポンプ(デシケーター)を使い、ブクブクと空気を抜いたら、その後「ゆっくり大気圧に戻す」工程が最も重要です。

真空状態でクラック内の空気が抜けたあと、大気圧に戻した瞬間に、外からの圧力が樹脂をクラックの奥深くまでグイグイと押し込んでくれます。この「真空引きと大気圧戻し」をセットで行うことで、はんだの微細な隙間まで樹脂が充填され、研磨中に崩れないガッチリとしたサンプルが完成します。

レントン
レントン

昔、樹脂を流し込んで真空引きをして放置したところ、戻ってきたら樹脂が沸騰して爆発したようにボコボコに固まっていたことがありました(こっそり無かったことにしました笑)。エポキシは固まる時に熱を出します。一度に大量に流すと熱暴走するので、室温が高い時は恒温槽などで低温管理しながらゆっくり固めるのが正解です。

4. 最大の罠:柔らかい「はんだ」が引き起こす「ダレ」

いよいよ研磨です。ここで最大の敵となるのが「ダレ(スミアリング)」です。

注意


鉛フリーはんだは非常に柔らかい金属です。粗いヤスリで力任せに削ると、表面の金属が粘土のように横に伸び、微小なクラックの隙間をパテのように綺麗に埋めてしまいます。すると、顕微鏡で見ても「クラックなし」という偽りの合格結果が出てしまうのです。

これを防ぐためには、以下の「研磨の黄金テンプレート」を守り、段階的に傷とダレを取り除いていく必要があります。

プロもやっている研磨の黄金テンプレート


① 粗研磨(耐水ペーパー):#300 → #1000 → #2000
必ず水を流しながら(クーラント)削り、摩擦熱を抑える。

② 精密研磨(ダイヤモンド液):9μm → 3μm → 1μm
ペーパーの傷を消し、ダレをスパッと切り取る。※3μmを挟むのが業界標準の王道。

③ 最終仕上げ:0.05μm(コロイダルシリカ等)
鏡面仕上げ。金属の結晶レベルまで見えるようにする。

レントン
レントン

300から少しずつ傷が消えていき、最後にピカピカの鏡面が現れる瞬間は、職人になったような気分になり本当に楽しいものです。ただ…複数の業務を受け持つエンジニアが断面作成に半日もかけていては、他の業務が完全にストップしてしまいます。

まとめ:研磨は楽しい。でも「外注」も立派な戦略

まとめ


✅ ターゲットは「基板の端・角」「固定点の周辺」「X線で怪しい箇所」を狙い撃ちする
✅ 切断前に樹脂で「鎧を着せる」。振動で自分がクラックを作らないために
✅ 真空引きは「空気を抜く」だけでなく「大気圧に戻す瞬間」が本番
✅ エポキシは一度に大量に流すと熱暴走する。ゆっくり低温管理が正解
✅ 「ダレ(スミアリング)」がクラックを隠す。黄金テンプレートで段階的に研磨する
✅ メカニズムを知っていれば外注写真をプロの目線でジャッジできる

メカニズムと正しい手順、そして「ダレ」という罠を理解していれば、自分でヤスリを握らなくても、外注先から上がってきた写真を見て「ここ、少しダレてませんか?」「真空引き甘くないですか?」とプロの目線でジャッジすることができます。

評価エンジニアの本当の仕事は、ヤスリをかけることではなく、「真実のデータから設計を導くこと」です。

レントン
レントン

全3回にわたるはんだクラック対策シリーズ、いかがでしたでしょうか。「神頼みの評価」から「メカニズムで語れる評価」へ。この知識が、どこかの暗室で悩むエンジニアの助けになれば幸いです!
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レントン

評価部門で15年間、実製品のノイズ対策やテストと 向き合ってきた現役エンジニア(グループリーダー)。 2児の父として、子どもたちに癒されながら日々奮闘中。 現在はiNARTE EMCエンジニア資格にも挑戦中。 実は、難しい数式や専門用語はちょっと苦手です。 だからこそ小難しい理論には頼らず、現場でひたすら 手を動かしながら泥臭く技術を身につけてきました。 自分が理解するのに苦労した経験から、難解なEMCの 世界を「後輩に教えるような、誰にでもスッと伝わる 言葉」で噛み砕いて解説するのがモットーです。 教科書通りにいかずに悩む現場の皆さんの、 トラブル解決のヒントになれば嬉しいです!

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