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【EMC中級編】近傍界と遠方界の違い、磁界イミュニティの正体とは?携帯機試験で一発NGになる理由とEV時代の新しい脅威

「遠方界・近傍界の決定的な違いと」「磁界イミュニティ ループ面積が引き起こす悲劇」

お疲れ様です!

前回は「放射イミュニティ(RI)と伝導イミュニティ(CI)は繋がっている」という話をしました。今回はその続きとして、現場で「なぜか全然対策が効かない……」と頭を抱えるエンジニアが続出する2つの「別物の試験」について解説します。

この記事でわかること


✅ 携帯機(スマホやトランシーバー)を近づけた途端に一発でNGになる「近傍界」の正体
✅ EVシフトで急増している「磁界イミュニティ」の正体
✅ 遠方界と同じ対策が効かない理由と、近傍界特有の対策アプローチ

この2つは、前回解説した「空間から来る電波の試験(遠方界)」とは物理現象が根本から異なります。「遠方界と同じ対策をしても全く効かない」という落とし穴にハマる前に、ぜひ読んでおいてください。

1. 同じ「電波」でも別物:遠方界と近傍界の違い

暗室で「アンテナ照射の試験は受かったのに、携帯機(トランシーバー等)を近づける試験で一瞬でNGになった!」という経験はありませんか?

実はこの2つ、物理現象がまったく違う「別物の試験」と考えた方が良いです。

ポイント


遠方界(アンテナ照射):
アンテナから離れた距離から、細かい霧状の水を製品全体に均等に浴びている状態のイメージ。ハーネス全体の長さなどが共振の鍵になる。

近傍界(携帯機近接):
スマホやトランシーバーを製品の数センチまで近づける試験。至近距離では「電界」と「磁界」が分離しておらず、局所的に強烈なノイズが発生する。高圧洗浄機のノズルを至近距離からブチ当てているようなもの。

特に近傍界では磁界成分が基板のパターンに直接巨大な電流を誘導し、ICを即死させます。「全体への均一な霧」と「一点への高圧洗浄」くらい違うため、対策のアプローチも根本から変わってきます。

レントン
レントン

「アンテナ試験は余裕で受かったのに、携帯機を近づけたら一発でフリーズ」という経験を初めてした時は本当に意味がわかりませんでした。別物の試験だと知ってから対策の方針が変わりました。

2. 近傍界対策のアプローチ

遠方界の試験であれば「ハーネスにフェライトコアを追加」「信号ラインにコンデンサを追加」という対策が有効です。

しかし近傍界の場合、問題は「局所的な強烈な磁界が基板のパターンに直接誘導電流を発生させること」です。

ポイント


ループ面積を小さくする:
基板パターンが作る「輪っか(ループ)」が大きいほど、磁界から受ける影響が大きくなります。問題の回路のパターンを見直して、ループ面積を極力小さくすることが根本対策です。

磁界を遮蔽する:
電界シールドとは異なり、磁界を遮蔽するには透磁率の高い材料(パーマロイや電磁鋼板など)が必要です。アルミや銅のシールドケースでは磁界は通り抜けてしまうため、材料の選定が重要です。

注意


アルミや銅のシールドケースは電界には有効ですが、磁界は素通りします。近傍界でNGが出た時に「アルミで囲めばいい」と判断するのは危険です。

3. 第3の敵:EV時代の新しい脅威「磁界イミュニティ」

さらに最近のEV(電気自動車)シフトで猛威を振るっているのが「磁界イミュニティ」の試験です。数十Hzから数kHz程度の極低周波域で試験を行います。

これは電波(RI)の親戚として扱われますが、周波数が低すぎるため電波として飛んでいけず、ただの「巨大な磁石の波」として空間に存在しています。EVの巨大なモーターや大電流ケーブルが発生源です。

ポイント


この磁界の恐ろしいところは、基板のパターンや配線が作る「輪っか(ループ面積)」を突き抜けると、電磁誘導の法則によって線の中に勝手にノイズ電圧を発電させてしまうことです。アンテナで受信するのではなく、配線そのものが「コイル」になってしまうのです。

中学校の理科で習った「コイルに磁石を近づけると電気が流れる(電磁誘導)」、まさにあの現象が基板の上で起きているのです。

これを防ぐには、配線をツイストペア(2本の線をらせん状に撚り合わせる)にしてループ面積を潰すなどの根本的な構造対策が必要になります。

レントン
レントン

EVが増えてから、磁界イミュニティで初めてNGが出る製品が増えてきた実感があります。「今まで通ってたのに急にNG」の背景にEV化が絡んでいることも。

まとめ:ノイズの「種類」を見極めてから対策を打て

まとめ


✅ アンテナ照射(遠方界)とスマホ近接(近傍界)は全く別の物理現象。同じ対策は効かない
✅ 近傍界の本質は「局所的な磁界による誘導電流」。ループ面積の縮小と磁界遮蔽材料の選定が鍵
✅ 磁界イミュニティはEVシフトで急増。配線が「コイル」になって誤動作を引き起こす
✅ 「電波」とひとくくりにせず、ノイズの種類を見極めてから対策を打つのがプロのセオリー

「このノイズはどこから来て、どの物理現象でICを狂わせているのか」を見極めてから対策を打つ。それがトラブルシュートを最短で終わらせるプロのセオリーです。

レントン
レントン

アンテナからの遠方界、トランシーバーの近接照射、そしてEV時代の磁界ノイズ。これらを全部同じ「空間から来るノイズ」だと思って対策すると痛い目を見るよ!「今、自分が浴びせている波(敵)はどんな性質なのか」をしっかりイメージして、的確に急所を潰せるエンジニアを目指そう!

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