失敗から学ぶシリーズ

【EMCの罠】フェライトコアは万能じゃない!?ノイズの正体を暴く正しい使い方

この記事でわかること


✅「とりあえずフェライトコアを挟む」でノイズが落ちない理由
✅バッチンコアを使った「ノイズの正体」の簡単な見極め方
✅ノーマルモードとコモンモードの根本的な対策の違い
✅量産時に「コアを外して」と言われないためのプロの立ち回り

評価も終盤。どうしてもリミット線を突き抜けるエミッションノイズを前に、「頼む、これで受かってくれ…!」と祈るようにフェライトコアをパチンと挟む。
しかし、波形はピクリとも変わらない。あるいは、逆にノイズが増えてしまった……。
EMC評価エンジニアとして現場に立っていると、新人の頃は誰もが一度はこんな絶望を味わいます。

ノイズ対策における「最強のお助けアイテム」のように思われがちなフェライトコアですが、実は「何でもかんでも付ければノイズが落ちる」というわけではありません。
今回は、私が現場で実際に経験した失敗談を交えながら、教科書には載っていない「フェライトコアの正しい使い方と、ノイズの切り分け方」を解説します。

フェライトコアの本当の役割


フェライトコアは「魔法のアイテム」ではありません。手当たり次第に取り付けるのではなく、「今自分はどの種類のノイズと戦っているのか?」を切り分けるチェッカーツールとして使うのが正解です。

1. そもそもフェライトコアって何?


新人の頃、どうしてもノイズが落ちず、手当たり次第にフェライトコアを付けていた時期がありました。
ある時、特定のハーネス(配線)にコアを1本挟むとノイズがスッと落ちることを発見しました。「よし、ここが原因だ!」と思い、今度はプラス線とGND(マイナス)線を一緒に束ねて1つのフェライトコアに通してみたのです。

するとどうでしょう。さっきまで落ちていたノイズが復活し、全く落ちなくなってしまいました。
「なんで!?2本まとめた方がノイズを取ってくれそうじゃん!」と焦りましたが、実はこれ、自分が今「どの種類のノイズ」と戦っているのかを全く理解していなかったために起きた失敗でした。

2. 【失敗談】「1本なら効くのに、2本一緒に挟むと効かない」の謎

新人の頃、どうしてもノイズが落ちず、手当たり次第にフェライトコアを付けていた時期がありました。

​ある時、特定のハーネス(配線)にコアを1本挟むとノイズがスッと落ちることを発見しました。「よし、ここが原因だ!」と思い、今度はプラス線とGND(マイナス)線を一緒に束ねて1つのフェライトコアに通してみたのです。

​するとどうでしょう。さっきまで落ちていたノイズが復活し、全く落ちなくなってしまいました。

「なんで!?2本まとめた方がノイズを取ってくれそうじゃん!」と焦りましたが、実はこれ、自分が今「どの種類のノイズ」と戦っているのかを全く理解していなかったために起きた失敗でした。

3. フェライトコアは「ノイズの正体を暴く」チェッカーツールだ!


現場でノイズが出たとき、波形を見ただけではどんなノイズなのか分かりません。
そこで活躍するのが、フェライトコアを使った「切り分け」テクニックです。
ノイズが出ているハーネスに対して、パッチンコア(分割タイプ)を以下の手順で試してみてください。

① 2本まとめて挟む(コモンモードの確認)
プラス線とGND線を束ねて挟みます。これでノイズが落ちたら、ノイズの正体は「コモンモードノイズ」です。

② 1本だけ挟む(ノーマルモードの確認)
プラス線だけ、あるいはGND線だけを単独で挟みます。これでノイズが落ちたら、ノイズの正体は「ノーマルモードノイズ」の可能性が高いです。(※ただし、正常な信号波形もなまってしまうリスクがあるので注意!)

これを知っているだけで、闇雲に対策部品を付けるだけの「運ゲー」から抜け出すことができます。

4. ノーマルモードとコモンモード、どうやって対策する?

現場で使える!コアを使ったノイズ切り分け術


✅ 2本まとめて挟んでノイズが落ちた!
 → 正体は「コモンモードノイズ」。ケーブル全体や筐体を伝う厄介者です。

✅ 1本だけ(+かGND)挟んでノイズが落ちた!
 → 正体は「ノーマルモードノイズ」。行き帰りのルートが決まっているノイズです。

ノイズの正体が分かったら、次は基板上での根本対策です。
専門用語が並ぶと難しく感じるので、ここではざっくりとしたイメージで解説します。

① ノーマルモードノイズ(行きと帰りのルートを通るノイズ)
特徴: プラス線から出て、マイナス線(GND)へちゃんと帰ってくる、決められたルートを走るノイズです。

どうやって対策する?
・インダクタでせき止める: 配線に「チップインダクタ」というコイル部品を直列に入れます。インダクタは高周波にとって「通行止めの壁」になるため、ノイズをブロックできます。

・パスコンで逃がす: 「パスコン(バイパスコンデンサ)」を追加します。コンデンサは高周波を通しやすい性質があるため、ノイズだけを正規のルートからGND(アース)へ迂回(バイパス)させて捨てることができます。

② コモンモードノイズ(あちこちから漏れ出す厄介者)
特徴: プラス線とマイナス線の両方を「同じ方向」に向かって走り、空気中や筐体などを伝ってアースから戻ってくる厄介なノイズです。エミッション評価で波形がオーバーする真犯人の多くはこいつです。

どうやって対策する?
・フェライトコアで吸収する: 今回の主役!ケーブルごとガバッと挟んで、ノイズエネルギーを熱に変えてやります。

・コモンモードチョークコイルを使う: 基板上で2本の線をまとめてブロックする専用の部品を使います。

5. 周波数特性と「FM帯の悲劇」

フェライトコアには「得意な周波数」と「苦手な周波数」がハッキリしています。

【得意】中周波帯(10MHz〜300MHz付近):
100MHz付近のノイズには非常によく効きます。ハーネスがアンテナ化していることが多いので、コアを挟むのが一番手っ取り早いです。

【苦手】低周波帯(1MHz以下):
100kHz台のスイッチングノイズなどには、ただ通しただけでは全く効きません。線を2回、3回とコアに巻きつけて効果を倍増させる工夫が必要です。

【もっと苦手】高周波帯(1GHz以上):
GHz帯になると、逆にノイズをスルーさせてしまいます。この領域は基板のGND強化やシールド設計など、根本を見直すのがスジです。


■コストの壁:効果絶大なのになぜ「外して」と言われるのか
フェライトコアは強力ですが、「値段が高い」という致命的なデメリットがあります。
特にエミッション評価において、どのメーカーも判定基準が異常に厳しいのが「FM帯(70MHz〜110MHz付近)」です。


色々試してダメで、最終手段として高価なパッチンコアを装備。「よし、波形がリミット線に収まった!合格だ!」とガッツポーズをしたのも束の間……後日、設計部門から悪魔の一言が飛んできます。
「受かったのは良かったけど、そのコア高いから量産では外せない?」
……いやいや、外したらまたノイズで不合格になるじゃん!!と叫びたくなる瞬間です(笑)。


設計からすれば、量産品にポンポンと高価な部品を追加するわけにはいきません。
だからこそ、フェライトコアはあくまで「ノイズ特定のためのデバッグツール」として使い、最終的には基板上の安価な部品(インダクタやコンデンサ)の調整で乗り切るのが、プロのエンジニアの立ち回りなのです。

レントン

FM帯のノイズがコアで落ちてガッツポーズ!……でも後日、設計から「そのコア高いから量産では外して」って言われるんですよね(笑)。バッチンコアで原因を特定したら、最終的には基板上の安い部品(インダクタやバスコン)で対策するのが、評価エンジニアの腕の見せ所です!

6. まとめ:デバッグのスピードを上げるために


波形を見て悩む前に、まずは手を動かしてノイズの正体を暴くこと。これが合格への最短ルートです。
現場で「この帯域に効くコアはどれだっけ?」と迷わないために、手元に様々なサイズと特性のパッチンコアがセットになったデバッグキットを常備しておくことを強くおすすめします。いちいち部品庫へ探しに行く時間が省け、評価のスピードが劇的に上がりますよ!

迷った時の原因追及ツール!持っておきたいデバッグ用フェライトコアセット(10MHz〜300MHzに効果あり!)



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