EMC試験

EMC評価の絶縁支持体(絶縁体)の目的。何を選べばいいの?

疑問

  • EMC評価の規格に書いてある絶縁支持体って何だろう?
  • どうして必要なんだろう?
  • 比誘電率εr = 1.4以下って書いてあるけど何使えばいいの?

EMC評価って専門用語ばかりで難しいですよね。

しかも、調べてもまた難しいことばかりが書いてあって、さらに複雑になっていきます。

私もEMCに関わり始めたときはカタカナ、アルファベットの略など専門用語の応酬で、

何を説明されているの?

やばい、思考が追い付かない、会話について行けない💦

と、この業界でやっていけるのか悩みました・・・笑

(実際は説明してくれた先輩も分かっていないから、難しい言葉でごまかされていました。)

そんなEMC初心者の方へ少しでも力になればと思いこのサイトを運営しています。

ということで本題に入ります!

今回はEMC評価における「絶縁支持体」についてお話しします。

絶縁支持体 = 発泡スチロールと思ってOKなのですが、注意があります。

EMC評価には押出法発泡ポリスチレン(XPS)という種類のものを使用するようにしましょう!

それでは解説していきます!

絶縁支持体を使う目的

EMC評価の目的は、『電子部品やシステムが、近くにある他の部品に影響を与えないこと。
または、他の部品から発せられるノイズの干渉を受けず、正常に動作が出来ること
』を確認する為に行います。

評価を正確に行う為には、実際に使用する状態に近い環境にすることが必要です。

ですが、実際に自分たちの開発している電子部品が、どんな環境に置かれるのか細部まで分かっていますか?

他の電子部品と何cm離れていますか?

ハーネスの長さは何cmですか?

ハーネスはどんな経路を通って電源(バッテリ)と接続されますか?

近くに金属部品などありませんか?

細部まで理解して評価環境を再現して行うのは車両メーカーであれば出来るかもしれませんが、部品メーカーはおそらくムリです。

特に新規性の高い車は情報も少ないし、設計もどんどん変わってしまいます。

そこで規格などを用いて、この規格に合格すれば、この製品はどんな環境に搭載されても問題ないですよ!と言えるような評価方法になっています。

電磁波ノイズは金属や、周りの部品の影響を受けて、有利にも不利にも働いてしまう特性を持っています。

搭載環境が再現できない場合は何にも接触させたくない。

できれば空中に浮かせた状態で評価も行いたいです。

そんなときに活躍するのが絶縁支持体(=発泡スチロール)です。

誘電率は材料が電気エネルギーを蓄える能力を定量化した数値

ノイズの影響度は製品の“誘電率”という値で決まってきます。

誘電率が高い方が影響受けやすく、低い方が受けづらいです。

誘電率とは電気エネルギーを蓄える能力をあらわした数値です。

誘電率の値は、電磁波の伝わる速度や、材料内に蓄積できる電気エネルギーなど、材料を通過する電磁波ノイズの挙動に影響を与えます

電気エネルギーを蓄えるというのは、身近なものだとスマホや、車のバッテリー(電池)をイメージして貰えると分かりやすいかと思います。

一般的に電気を通す金属(鉄、銅など)の導体は電気をどんどん流してしまうので、電気エネルギーを蓄えることが出来ません。

蓄えることが出来るのは樹脂や、ゴムなどの絶縁体です。

絶縁体は電気は通さない代わりに、非常に小さいのですが電気を溜め込む能力を持っています。

誘電率が非常に低いのが空気です。

そして発泡スチロールもほぼ空気と変わらない誘電率の素材なのです。

つまり、絶縁支持体は製品が宙に浮いた状態を模擬する為に使うのです

ちょっとややこしいのですが、誘電率と似た言葉に導電率があります。

先ほども説明したように、

導電率・・・電気の流れやすさの数値化

誘電率・・・電気を蓄えられる量を数値化

と違いがあります。

比誘電率 εrは空気と材料の誘電率の比率

EMC評価で用いられているのが比較の比を追加した比誘電率です。

これは特定の材料の誘電率と空気(真空中)の誘電率の比を表しています。

発砲スチロール(XPS)の原材料は発砲スチレンとなり、非常に空気と近い誘電率を持っています。

様々な材料の比誘電率 一覧

バージニア工科大学「一般的な材料の誘電率」より

絶縁支持体は押出法発泡ポリスチレン(XPS)を使おう

発砲スチロールの中でも製法による種類があります。

ビーズ法発泡スチロール(EPS)押出法発泡ポリスチレン(XPS)です。

一般的に保冷ボックスや緩衝材として使われているのがビーズ法発泡スチロール(EPS)です。

割ったりするとポロポロと丸いビーズが出てくるものです。

丸い小さなビーズ(スチレン)をギュっと固めて作る製法です。

押出法発泡ポリスチレン(XPS)はおうちの断熱材や吸音材として活用されています。

EPSと違い、押し出し機で成型しながら作る製法なので密度の高いものが作ることが出来るのです。

EPSはビーズを固める際に熱加工や薬品加工を施すため、XPSより誘電率が高くなってしまいます。

上記の表のポリスチレンがEPSにあたります。比誘電率εr=2.6です。

EMC評価で推奨されている比誘電率はεr=1.4以下。

XPSはεr=1.1になるので適している部材になります。

押出法発泡ポリスチレン(XPS)はスタイロフォーム、ミラフォームという商品名で売られています。

EMC評価で使う絶縁支持対は押出法発泡ポリスチレン(XPS)を使いましょう!!

まとめ

  • 絶縁支持体は試験品が宙に浮いた状態を模擬するために使う。
  • 比誘電率εrは空気と材料の比率。空気に近い方が数値が低い
  • 絶縁支持体はXPS(押出法発泡ポリスチレン)を使おう

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